パイプカットのエンターテイメント性
水素と酸素とをゆるやかに反応させると、電気エネルギーとして取り出せるという原理を応用したもので、水の電気分解の逆の化学反応と考えてよい。
そして、発生した電気でモーターを回し、自動車を動かすという仕組みなのである。
いずれにしても、Tは驚くはどいろいろの角度から、C02削減のための自動車の動力源を模索してきた。
良いと思われていることは、手あたり次第に研究対象にしているような感じもあるが、数多い車種を保有しているということをマイナスにはせず、逆に車種やサイズ、用途などに応じて、もっとも適した性能とそれを達成できる開発コストを考えながら、幅広く研究活動を展開している、というべきかも知れない。
「安全・便利・快適」を満たすクルマを追求。
そのなかで、どれが本命となるか?は首脳陣にとっても明確ではなかった。
というよりも、どんなサイズ、どんな仕様のクルマに対しても最適なC02削減のシステムというものは、現在の技術水準のなかでは存在しないのではあるまいか。
すくなくとも、現代の技術水準においては、センチュリーやセルシオのような、豪華で重量の大きいクルマを、高速かつ静粛に走らせるシステムと、通勤や通学、あるいは買い物などのための小さなサイズのクルマ、Tでいえばスタ-レットやカローラHのようなクルマとでは、要求される性能に違いがあり過ぎる。
バッテリーに電気を蓄えて走るものは、C02やその他の有害排気成分はゼロだが、航続距離や最高速を通常のガソリンエンジンなみにすることは、現段階ではむずかしい。
Tに限らず、多くの自動車メーカーの先行研究部門は、可能性のありそうなものに対しては、ともかくテストをしていくというやりかたがこれまでも一般的だった。
GMやフォードといったアメリカの大手自動車メーカーでは、およそ自動車とは直接的な関係があるとは思えないものにも意欲的に取り組んでいる。
物性や生化学のような幕議科学はもちろんのこと、遺伝子工学やファッションから音楽まで、極めて多様な研究テ-マで、専門の研究者たちが働いているのだ。
それに比較すると、日本の自動車工業の研究・開発部門はこれまでは、それほど遠くを見ていなかった。
いや自動車という直面しているものにこだわり、それ以外の分野にまで研究対象や広げる余力を持っていなかったというべきだろう。
Tグループでは、独立組織の附T中央研究所でこそかなり別の分野に対しても意欲を示していたが、それも歴史的な意味で、かつてはグループの親会社、であったT自動織機から引き継いだ繊維関係の研究によるものからだった。
現在では、電波関連や触媒などの研究成果はかなり大きい。
が、やはり自動車の技術に関連しているものがほとんどである。
それはともかくとして、いかにしてCOzを削減するか?Tのビジョンは、どのようなものだろうか。
現実の問題として、現在ほとんどの自動車はガソリンであれ、ディーゼルであれ、化石燃料を工ネルギ-源とする内燃機関である。
それらはすべて、C02を排出する宿命にあるのだから、同じ距離を走るのに必要な燃料の量を少なくする。
すなわち憐山費の削減を行うことで、排出するC02の総量を抑えることを掲げている。
それが直噴エンジンなど、現有のエンジンを改良することで燃費を少なくしようとする段階だ、という。
しかし、それだけでは限界があるゆえに、画期的にC02の排出量がすくないものや、あるいはまったくC02を排出しないで走ることのできる自動車への取り組みも同時に進めて行こう、というわけだ。
それが、CNGなどの代替ェネルギーを使うシステムや、ガソリンを使っていながら、これまでの燃費の半分で済むというTHS(T・ハイブリッドシステム)なのだ。
ニッケル水素電池による電気自動車や、水素吸蔵合金を使った燃料電池自動車の場合はまったくC02を排出しないシステムであるが、それらを頂点に『究極のエコカ-』を位置づけている。
だが、それが何になるか?はむろんわかってはいない。
ただ、自動車メーカーとして長い経験を積んできただけに、商品としての自動車としての価値である性能の高さ。
『安全・便利・快適』は絶対に確保しなくてはならない、と明確に打ち出している。
安全や便利とともに、快適という項目を立てていることに注目したい。
これは、単に乗り心地がよいとか、室内の居住宅聞が広いといったことを指しているのではなく、用途に応じた多種多一様の自動車について、すべてその目的や用途に対応した性能を確保するものということになる。
すなわち、それがラグジユアリ-ヵーであれば、充分な広きや静粛さ、そして上質な内装をもつボディであって、しかもこれまでのラグジュアリ-カ-に優るとも劣らないだけの動力性能を、C02の排出量を抑えながらも確保することである。
また、スポーツカーという範需のクルマ、であれば、高速でコーナリングをこなしても危険のない足回り、それに見合うパワフルなエンジンと、操作を楽しめるだけの潜在性能をもつことを意味するのではないだろうか。
エコカ-、C02排出をはじめとしてあらゆる意味で環境にやさしい自動車とは、どうあるべきなのか。
それは、化石燃料を使う場合でも燃費が非常に良くてC02の排出量がすくないものや、電気工ネルギ!など走行過程においてはC02をまったく排出しないもの(とはいっても電気を発生させる過程で化石燃料を使えば究極のものとはならないが)であればいいわけではないのだ。
これまでの自動車と同じように便利で、使いやすく、価格も運用コストも、すべての面でこれまでと同等の経済性を確保する必要がある。
あくまで、ユーザーがなんらかの我慢を強いられながら、やむを得ずに使う自動車であってはならない、と筆者は解釈する。
T自動車が掲げる寸安全・便利・快適という要素を満たすクルマであることが求められる」という狙いは、立派なものと評価していいのではあるまいか。
イギリスの経済紙は、二一世紀初頭には日本のメーカー(多分T自動車を指していると思われる)が、Fを抜いて世界シェアで第二位になると予言している。
それは環境戦略において、アメリカのビッグスリ-(G、F、C)に先行しているという理由からである。
いまから三O年前、一九七0年代に入るころ、アメリカはロサンゼルスの大気汚染問題を契機として、非常にきびしい排出ガス規制を法制化した。
いわゆるマスキー法(一九七O年大気汚染防止法)である。
それに加えてオイルショックで原油価格が暴騰して、低燃費でなくては自動車の商品価値がなくなるという危機が訪れた。
対米輸出に命を掛けていた日本の各メーカーはこぞって、本家のアメリカの自動車メーカーをしのぐ、低燃費・低公害の自動車を開発した。
これによって、アメリカにおける日本車のシェアは一気に拡大し「災いを転じて福となす」結果となった。
そしてこのことは、日本の自動車メーカーの技術者たちに、やれば出来るのだという自信を与えることになったのだった。
これは排気中のHC(ハイドロカーボン)とNOx(窒素酸化物)に関してであるが、その後、日本のメーカーのつくる自動車はこうした成分についていえば、世界中でもっとも排気のきれいなものとなり、現在に到っている。
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